もう一度だけ、キミに逢いたい。

「ゆりちゃんまさか……何も覚えてないの……?」




……そう。


ゆりちゃんはなぜ自分が意識を二日間も寝ていたのか、そして、伊織くんのことで嫌がらせをされたこと、その部分に関する記憶が綺麗サッパリ抜けていた……───




そのことを知ったゆりちゃんは、これ以上私に負担をかけたくないと思ったのか、泣くことを無意識のうちに我慢していたみたいだけど、気づけば私はゆりちゃんこう言った。




「……泣いて、いいんだよ」


って。


だって、一番辛いのは私じゃない。


記憶を一部失くし、そうなるまでに追い詰められた、ゆりちゃん本人なのだから……


私のその言葉に、ゆりちゃんは我慢せずに思いっきり泣いてくれた。




……ゆりちゃんの涙を見るのが辛くないわけではない。


むしろ、見るたびに胸が掻き毟られるように痛くなる。

< 387 / 471 >

この作品をシェア

pagetop