那須大八郎~椎葉の『鶴富姫伝説』~
大八郎と美砂が水流の一行に最初に同行したときの事である。
亰から鎌倉に持ち帰る品物が多く移動の足が遅くなった。宿場まではまだ距離があるのに陽は落ちて暗くなった。若干危険ではあるが一行は野宿をすることにした。
水流は盗賊の襲撃が気になっていた。街道筋ですれ違った者の中に盗賊の下見係がいたらとても厄介だ。盗賊とは辺鄙なところで遭遇するより京の近辺で遭遇する方が危険だ。辺鄙なところでは食い物や着ぐるみを差し出せば済む事が多いのに対し、亰近辺の盗賊は金目の物を盗んで売り捌く手蔓《てづる》を持っているから根こそぎだ。更に盗賊が検非違使と繋がっているととてもに厄介になる。
行商人でもあり草の者でもある水流の一行は手練の盗賊とは極力遭遇しないようにはしているものの、万が一の時は競り合いもやむを得ない。
その夜、人の気配で一行は目を覚ました。最初に反応したのは大八郎と美砂だ。大八郎は最初に近づいて来た様子見の男の背後に這うように近づくと脇差で心臓を一突きした。呻き声と共に男は地面転がり絶命した。大八郎と美砂は男を下の斜面の大きな木の根元まで引きずって行き、街道とは反対側にまるで休んでいるかのようの腰を下ろした状態で置いた。
今、再び静寂が訪れ虫の声と草木のざわめきに戻った。だが終った訳ではない。盗賊たちは恐らく今何が起きたか悟った筈だ。水流は一行に指示を出す。
大八郎と美砂は背中合わせに横になった。この落ち着き払った行動に見た水流は〈こいつら相当場数を踏んでいるな。〉と頼もしさと安堵感を感じた。とは言え油断はできない。
かなり時間が経ってから今度は微かながら草木が擦れるような音が近づく。盗賊たちが這うような低い姿勢で迫って来た。
僅かな月灯かりの下、一行も盗賊も夜目が利く。美砂が寝返りを打ち白い脚を無造作に剥き出しにした。脚だけが月灯かりに照らされたかのように白く浮き出している。同時に数個の影が実態となり飛び出してきた。盗賊の襲撃だ。
大八郎は最初の3人をことごとく瞬時に倒した。水流と一行の面々も数名の盗賊を倒していた。美砂は近づいてきた一人を仕留めていた。盗賊たちは騒ぐことなく消えるように去った。
競り合った時間は僅なものであった。大八郎と美砂の働きによる部分も大きいのだが、水流がそれ以上に驚いたのは後始末の手際の良さだ。二人は盗賊の亡骸を街道から見えないように斜面の下へ転がし、まるで倒れた木々の一部のように上手に並べた。
亰から鎌倉に持ち帰る品物が多く移動の足が遅くなった。宿場まではまだ距離があるのに陽は落ちて暗くなった。若干危険ではあるが一行は野宿をすることにした。
水流は盗賊の襲撃が気になっていた。街道筋ですれ違った者の中に盗賊の下見係がいたらとても厄介だ。盗賊とは辺鄙なところで遭遇するより京の近辺で遭遇する方が危険だ。辺鄙なところでは食い物や着ぐるみを差し出せば済む事が多いのに対し、亰近辺の盗賊は金目の物を盗んで売り捌く手蔓《てづる》を持っているから根こそぎだ。更に盗賊が検非違使と繋がっているととてもに厄介になる。
行商人でもあり草の者でもある水流の一行は手練の盗賊とは極力遭遇しないようにはしているものの、万が一の時は競り合いもやむを得ない。
その夜、人の気配で一行は目を覚ました。最初に反応したのは大八郎と美砂だ。大八郎は最初に近づいて来た様子見の男の背後に這うように近づくと脇差で心臓を一突きした。呻き声と共に男は地面転がり絶命した。大八郎と美砂は男を下の斜面の大きな木の根元まで引きずって行き、街道とは反対側にまるで休んでいるかのようの腰を下ろした状態で置いた。
今、再び静寂が訪れ虫の声と草木のざわめきに戻った。だが終った訳ではない。盗賊たちは恐らく今何が起きたか悟った筈だ。水流は一行に指示を出す。
大八郎と美砂は背中合わせに横になった。この落ち着き払った行動に見た水流は〈こいつら相当場数を踏んでいるな。〉と頼もしさと安堵感を感じた。とは言え油断はできない。
かなり時間が経ってから今度は微かながら草木が擦れるような音が近づく。盗賊たちが這うような低い姿勢で迫って来た。
僅かな月灯かりの下、一行も盗賊も夜目が利く。美砂が寝返りを打ち白い脚を無造作に剥き出しにした。脚だけが月灯かりに照らされたかのように白く浮き出している。同時に数個の影が実態となり飛び出してきた。盗賊の襲撃だ。
大八郎は最初の3人をことごとく瞬時に倒した。水流と一行の面々も数名の盗賊を倒していた。美砂は近づいてきた一人を仕留めていた。盗賊たちは騒ぐことなく消えるように去った。
競り合った時間は僅なものであった。大八郎と美砂の働きによる部分も大きいのだが、水流がそれ以上に驚いたのは後始末の手際の良さだ。二人は盗賊の亡骸を街道から見えないように斜面の下へ転がし、まるで倒れた木々の一部のように上手に並べた。