那須大八郎～椎葉の『鶴富姫伝説』～

　水流一行が鎌倉に戻ってきてから、政子は〈耳川の源流にある椎葉という村についてもう少し知りたい。そこにいる鶴富姫のことも知りたい。もう少し調べてはくれぬか。そして緒方惟義はどのように絡んでいるのかが重要だ。〉そう伝えた。
　椎葉に行き美しい女の正体は物怪(もののけ)が人の姿を借りているのではないということは分かった。 鶴富姫が祖母常盤御前の若い頃に瓜二つだというのであればなおさらのことだ。
　清盛入道と常磐御前の間に生まれた能子は藤原兼雅に嫁いだ後に女児を生んだ。能子が常磐の娘であると言う事は源氏の血を引いている事になる。
　平家の復興を願う者の一人が能子の生まれたばかりの女児に濡れた布を被せた。雑司女がすぐに気付いて大事には至らなかったが義経を知る人物が豊後の緒方惟義を頼ってはどうかと進言したとの事だった。惟義も今度はしくじる事はできない。義経一行の九州への逃避行を手助けする際に平知盛の怨霊に阻まれてしまった苦い過去がある。
　惟義は平家嫡子の血を引く落人が多い五家荘ではふさわしくないと椎葉を選んだ。椎葉に着いた女児は健康で長生きして欲しいと言う願いを込め 鶴富姫と名付けられた。