16歳、きみと一生に一度の恋をする。
「ん? 今井なにしてるだ?」
それは、晃じゃなくて担任だった。弾んだ気持ちが一気に萎んでいく。
「……あ、い、いえ」
期待して、ガッカリして、また期待して。
会いたいと思えば思うほど、会えない寂しさが湧いてくる。
とぼとぼと校舎を出ると、グラウンドも部活をする生徒がいないので静まり返っていた。
私の足は一旦、正門のほうへ向いたけれど、すぐに別の方向に進む。
彼がいない間、このドアを何回ひとりで開けただろう。
開けた瞬間に、名前を呼んでくれるんじゃないかと思った。
でも今日も瞳に映るのは、晃がいない陸上部の部室だった。
人の出入りが減ってしまったからなのか、なんだか少し空気が埃っぽい気がする。
私は晃がいつも王様みたいに寝転んでいたソファにちょこんと座った。鮮やかな赤色をしていたソファも今はくすんで見える。
――『俺は何度もあるよ。こうなれたらいい、こうだったらいいって思うこと。でも、無理だよな。……許されないんだよな』
あの河川敷で晃が吐き出した言葉の意味をずっと考えている。
私に葛藤があったように、彼にも数えきれないほどの苦悩があったんだと思う。
惹かれ合っていても、私たちは重なり合ってはいけない。
晃への想いが増える一方で、私はそこにどれくらいの覚悟があっただろうか。
無意識に親指を口元に当てる。
「もう噛むなって言ったじゃん」
その声にハッとして顔を上げると、ドアの前に晃が立っていた。