16歳、きみと一生に一度の恋をする。
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自分でも説明がつかないほど、心がぐらぐらしている。
ただひとつだけはっきりしているのは……。
汐里に声をかけたのは、同情なんかじゃない。
週明けの月曜日。母さんがオーダーメイドで作ったダイニングテーブルには、スクランブルエッグとバターが塗られた生食パンが用意されていた。
すでに一彦さんは家を出たようで、母さんと向かい合って朝食を取るのは久しぶりだ。
「手足の感覚は戻ってきた?」
「まあ、だいたい」
「もし予後不良が悪かったら、違う治療法を試してもいいんじゃないかってお父さんが言ってくれたんだけど晃的にはどう?」
「んー」
俺は自分のことなのに他人事のような返事をした。
「本当にお父さんには感謝よね。こんなに晃のことを親身になって考えてくれてるんだから」
その言葉を聞いて、手に持っていたフォークを置く。喉ごしがいいはずのスクランブルエッグがうまく飲み込めない。
一緒に暮らしはじめて五年が経つけれど、一彦さんとの関係はずっと平行で、長く話したこともない。
真面目に仕事をしてくれて、母さんのことを大切にしてくれていることは知っている。
なにもなければ……もう少し距離が近くて男同士の付き合いもできたと思う。
でも汐里のことを考えると気持ちは複雑で、どうしたらいいのか答えが出ない。