転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
 自分を奮い立たせ、堂々と歩き、立っている兵士に敬礼をする。

「見張り役、お疲れさまでした! 交代の時間です!」

 それっぽいセリフを、頑張って低めの声を出して言ってみる。
 心臓はバクバクだし、足の震えも止まらない。変な汗もかいてきた。

「……お待ちしておりました」

 扉の前で待機していた兵士が、丁寧な口調でそう言った。

「じゃあ、手錠の鍵を……」

 早く鍵を手にしたくて、急かすように兵士に言うと、兵士が私の両手を急にぎゅっと握りしめる。

「ひぃっ!?」

 何事かと思い、変な声が出てしまった。
 ……もしかしてバレた!? ここまで来たのに!?

「来てくださると信じていました! シエラ様!」
「……ニッ、ニール!?」

 深くかぶっていた重い兜を上げれば、目の前に、同じく兵士に扮したニールが立っていたのだ。

「ど、どうしてニールがここに!」
「考えもやり方も、多分シエラ様と同じです。私はフィデル様専属執事なので、フィデル様の場所がバレることのないよう、私自身も城では姿をあまり見せないよう命令されておりました。よって、城で私の顔を知っている者は少ない。兵士に化けたところで、誰にもバレないというわけです。この格好をお借りするのには……少々、手荒な真似をさせていただきましたが」

 ニールは後ろ頭を掻きながらおちゃめに笑っているが、私の飛び蹴りとは比べ物にならないことをしていそうな気がする。ニールみたいに穏やかな人が、いちばん怒らせたら怖いタイプだったりするのだ。

「フィデル様が地下牢に捕まったと聞いて、どうすればいいかを考えました。そして私は、信じることにしたのです。シエラ様が必ず、フィデル様を救ってくださることを」
「ニール……」
「私にできることは、この扉の前でシエラ様を待ち、おふたり出てくるまで、この扉を守ることです。私がいる限り、地下牢へは誰も出入りさせません。だからシエラ様、フィデル様を救い出してください」
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