転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
 だったら、兵士のふりをして交代しに行けばいい。

 夜が明け、私はついに動き出した。エリオットが、朝に私の様子を見に来ることを危惧したが、昨日の夜の言い方的にその可能性は極めて低い。

 エリオットも今日は楽しみにしていた演説があるようだし、準備で忙しいはず。昨日、私がまだエリオットを好いているように演じていたのもあって、エリオットは今、私に対しての警戒心は薄い……と思う。

 城内を〝千里眼〟で観察し、自分がいる部屋の前に兵士が通りかかったタイミングで、私は後ろから思い切り背中に向かって飛び蹴りをした。
 床に頭を打ったのか、伸びきって気絶している。都合はいいが、そこまでする気はなかったので、心の中で何度も謝っておいた。
 兵士の服を拝借し、気絶した兵士を部屋に寝かせて外に出る。鍵をかけ、なるべく人が通らなそうな場所を歩きながら、地下牢へと向かった。

 エリオットとロレッタの動きを少しだけ確認する。ふたりは今まさに、城を出て行くところだった。

「……なんであのふたりが制服着てるのかしら。もう卒表したのに」

 バカップルの青春のやり直しに付き合わされる新入生を哀れに思いながら、私は足を早めた。

 目の前まで来たところで、壁からそーっと兵士の様子を伺う。最後に交代したときからいくらか時間が経っていれば、怪しまずに交代できる。

 ――もう、懸けるしかない!
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