転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~

「フィデルに会うには、フィデルの世話をずっと担当している執事のニールに頼むのがいちばん手っ取り早いわ」

 私はドリスさんの部屋に招かれ、そこで少し遅めのランチタイムをドリスさんと一緒に過ごしていた。

「ニールって、もしかして緑髪の……」
「あら? 知ってるの?」
「い、いえ! 知りません!」

 このタイミングで、ドリスさんに自分の能力のことを話していいものかわからず、咄嗟に否定する。
 あの緑髪の執事は、ニールっていうのか。話を聞くに、フィデル様の専属執事のようだ。
 名前がわかったので、能力を使えば見ることが可能になった。けど、このままドリスさんに協力してもらったほうが、スムーズに事が運びそうだ。

「あたしがニールをここに連れてくるわ。ニールを呼んだら、あたしがその間ロレッタに王妃教育の続きをしに行く。エリオットも一緒にいるだろうから、あんたはあたしがふたりの気を引いてるうちにフィデルとの接触を試みなさい」
「はい! わかりました」
「ニールをうまく説得できなきゃ、この作戦は台無しになるんだから。成功するかどうかの鍵はそこよ」
「うぅ……。自信はないけど、頑張ります」
「あたしがここまでやって失敗したらただじゃおかないんだから。じゃあ、健闘を祈ってるわ。……あたしももう何年も会ってないけど、フィデルに会ったらよろしくね」

 ドリスさんはグラスに入っていた赤ワインをごくごくと飲み干すと、颯爽と部屋から出て行った。
 甘い香りが漂う、紫を基調とした大人な部屋にひとり取り残され、私は緊張しながらフィデル様の執事が来るのをひたすら待った。

< 16 / 147 >

この作品をシェア

pagetop