転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
「それが、婚約破棄された直後に使えるようになって。昨日目覚めたばかりなんです。私の能力」
「……昨日?」
そんなに驚いた顔をされても困る。幼い頃から異能を持っていたフィデル様と違い、私は異能歴一日目だ。
「なんだか、いきなりお前の話に信憑性がなくなったな」
「本当なんですって! あ、信じてくれないなら私が今朝見たフィデル様の様子をお伝えしましょうか? ニールと玄関先で話すフィデル様は、少し眠たそうな目をしていて……」
「やめろ。知らないところで、勝手に見られていた自分の様子なんて聞きたくない。……それにしても、その話が本当なら運がいいな。あいつはお前の能力を自分のものにしたかっただけ。そのまま結婚していたら、お前は一生その能力をあいつのために使い続けることを強要されただろうな」
ずっと、エリオットのいいようにこの〝千里眼〟を? 想像するだけで、軽く身震いする。
「エリオット……あいつは、〝予知能力〟を持って生まれた俺への劣等感からか、ずっと俺のことを目の敵にしていた。お前を手に入れることで、自分も能力を手に入れた気でいたんだろう」
「馬鹿な男だ」と、フィデル様は嘲笑して吐き捨てた。
「あの……フィデル様」
まだ、フィデル様に話したいことはたくさんある。
でも、それより先に、謎だらけのフィデル様のことをもっと知りたいと思った。相手の事情も知らないで協力を頼むなんて、そんな都合がいい話はない。
「フィデル様は、どうしてこの別邸に幽閉されているのですか?」
私がそう聞けば、フィデル様はしばらくの間、黙ったまま俯いた。
聞いていい話ではなかったかもしれない。でも、聞かなければ、フィデル様のことを理解できない。
私は目を逸らすことなく、ずっとフィデル様のことをまっすぐと見つめた。永遠に続きそうだったしんとした空気を破ったのは、フィデル様の大きなため息だった。
「……わざわざここまできた人間は、お前が初めてだ。昔話のひとつくらいしてやろう」
フィデル様は、テーブルに置かれていたすっかり冷めきった紅茶をひとくち飲むと、自分の過去について話し始めた。