転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
フィデルの過去
 この話を自分から誰かに話すのは、初めてのことになる。
 どうしてこんな、会って数分足らずの女に話す気になったのかは、自分でもよくわからない。……というか、今まで誰にも聞かれたことがなかった。
 俺がどうしてこうなったか、なんて――。

 幼少期、俺は自分が特別な力を持っていることに気づいた。その力とは、〝予知能力〟だった。
 ふとしたとき、まるで夢を見ているように、まだ見たことのない情景が浮かび上がる。そして見たものと全く同じ出来事が、必ず起きるようになっていた。

 まだ幼かった俺は、それをそのまま両親に話した。最初は俺が変なことを言っているだけだと思っていた両親だったが、俺の言うことが次々と当たっていくにつれ、両親は俺が異能者であることを確信したようだ。

「フィデル! すごいわ! こんな力を持って生まれたのは、フィデルが初めてよ」 

 この国の王族で、いわゆる異能を持って生まれた子供は、どうやら俺が初めてだったらしい。

 ここから遠い他国では異能を持っている人間がたくさんいるところもあると聞くし、世界的に見れば、異能者という存在自体はそこまで珍しくもなかったようだが、この国では違った。異能を持っている人間は、完全に〝特別な人間〟だった。

 だからだろうか。俺は次男でありながら、両親から重宝され可愛がられていた。それでも父は、長男であるエリオットをどちらかというと贔屓していたが、母は俺のことを気にかけていたように感じる。

 兄はコミュニケーション能力が高く、明るくリーダーシップな性格で、誰からも愛されるような人だった。反対に俺は引っ込み思案で、人見知りが激しく、自分から前に出るようなタイプではない。

 しかし、俺はなにかを学ぶことが好きだったので、勉強は得意だった。物覚えも早かったようで、母によく褒められていたのを覚えている。
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