転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
「ええ。フィデルからも協力してもらえることになったわ。これで、ニールとの約束も守れそうな気がする」
「ありがとうございます! これからの日々が、シエラ様のおかげで楽しみなものになりました。それはきっと、フィデル様も同じだと思います」
「そうかなぁ? そうだったらいいけど……。あ、そうだ。私、自分の荷物を部屋に置きっぱなしなの。今からこっそり取りに戻るから、ニールは別邸で待機しててくれない?」

 しないと思うが、もしニールがこのまま鍵を閉めて城に戻ってしまえば、私は別邸に入れなくなってしまう。だから、鍵を持っているニールには、私が戻ってくるまでここにいてほしかったのだ。

「ああ。シエラ様のお荷物は、こちらですよね。必要かと思い、ついでに持ってきちゃいました」
「えっ!? 本当に!?」

 よく見れば、ニールの後ろに大きなバッグが置いてある。中を見ると、私の私物がぱんぱんに詰め込まれていた。……下着もきっちり畳まれて入っている。ニールに見られたと思うと、気恥ずかしくなりまともに顔が見れなくなった。

「ありがとうニール。さすがね。気が利くわ」
「いえ。ドリス様に言われたんです。多分、荷物が置きっぱなしだろうから、まとめて持って行ってやってくれと」
「ドリスさんが……!?」

 あの厳しいドリスさんが、そんな細かいところまで気にかけてくれたなんて。

「あと、シエラ様もお腹が空くだろうと思い、パンも持ってきました。よかったら後でゆっくり召し上がってください。これからは、ご飯を持ってくるときは多めに持ってきますね」

 美味しそうなパンが入ったかごを渡される。ニールの完璧すぎる心遣いには圧巻だ。

「最後に、鍵のことなんですが。さすがにこれは私が持っていないと怪しまれますので……。しばらくは、鍵をかけた〝フリ〟をしておきます。どうせ、この別邸には僕しかくることはありませんし。つまり、二十四時間出入り自由ということなので。おふたりは好きなように、うまくやってください」

 鍵を閉められる心配なんて、する必要なかったみたい。ニールは私たちが行動しやすいよう、私たち以上に考えてくれていた。
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