転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
「見てフィデル! どう?」

 私はフィデルの前でくるっと一回転して、いつもと違う自分をアピールしてみた。私が選んだのは赤いオフショルのマーメイドドレス。エリオットがロレッタに選んだものとは真逆の、クールでセクシーなドレスだ。

 フィデルは目線を本から私へと移したが、すぐにまた本に戻り、ただ一言だけこう言った。

「別に……いいんじゃないか」

 あまりにも適当な返事なので、私はフィデルが読んでいた本を取り上げる。

「おい、なにをするんだ」
「だって、ちゃんと見もしないで適当なこと言うから! ね、どうかな? 似合う?」
「……自分に似合うと思って持ってこさせたドレスなんだろ。似合ってないとおかしい」
「それって、似合ってるってことだよね?」

 フィデルは隙をついて私の手から本を奪い返すと、私の問いかけにそれ以上答えることはなかった。

 私はフィデルより一足先に夜会へ行くので、フィデルとはここでいったん別行動となる。ドレスを勝手に持ち出したことを早い段階でバレては困るので、私はドレスの上からフィデルが今朝着ていた黒いコートを羽織った。

「じゃあ、私は先に城へ向かっておくわ。ニール、フィデルのことよろしくね」
「はい。フィデル様は私が責任をもって夜会へ忍びこませますので。ご心配なく!」
「もしなにかあったら、私がすぐ助けにいくわ。この目を使って、いつでもふたりの様子を見れるようにしておくから!」

 私はふたりに手を振って、別邸から外に出た。
 わざと一度街へ出て、まるで自分の家から城へやってきたように装い、夜会に招かれたひとりの客として会場である大広間に入った。
 私が大広間に姿を現すと、既にその場にいた他の客人たちの間にざわめきが起きる。

「あの子、婚約破棄されたんじゃなかったの?」
「私もそう聞いたけど、夜会にきてるってことは違うのかしら?」
「婚約破棄されて夜会に参加してたとしたら、どういう神経してるのか疑うよな」
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