転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
「どうしたシエラ。一昨日まで、あんなに情熱的な瞳で僕を見つめていたじゃないか。いつの間に……こいつなんかを庇い、僕にそんな目を向けるようになったんだ」
「あなたの戯言に興味はないわ。エリオット、私と取引しなさい」
「……取引だと? ずいぶんと、僕に偉そうな口をきくようになったものだ」

 エリオットは眉をひそめ、呆れたように言う。

「事件を解決できたら、フィデルを解放することを約束して」

 私が言うと、エリオットは一瞬驚いた顔をして、またすぐに嫌味ったらしい笑顔に戻った。後ろでフィデルが動揺しているが、私は振り返ることなくエリオットと話を進める。

「なるほど。そうきたか。だが、フィデルはそれを望んでいるのか? あいつは今までも文句ひとつ言わず、あそこで暮らしてきたんだ。本人だって、自分は罪を償うべきだと思っていたからこそ、そうしてきたんじゃないのか?」
「フィデルがなにを望んでいるかは、フィデルが決めればいいことよ。解放されてもフィデルが外に出たくなければ出なければいいだけ。私はただ、フィデルがどうしたいかを自由に選ぶ選択肢を与えろと言っているの」

 今までは、ひとつしかない選択肢を、フィデルに強要し無理矢理納得させていただけだ。

「やれやれ。こう言ってますが、どうなさいますか? 父様」

 エリオットは上を見上げ、陛下に返事を促す。

「……いいだろう。国のために貢献することができれば、相応の見返りはやらねばならん。フィデル、これはお前にとって、最初で最後のチャンスだと思え。国民をここまで脅かせた責任をとれなかった場合は……覚悟をしておけ」

 威厳に満ちた鋭い眼差しが、私とフィデルを交互にとらえる。これは、私に対する忠告でもあるということか。
「許可が下りたことだし、約束しよう。フィデルの解放を。ただし、うまくいけばの話だけどね」
「言ったわね。次こそ、約束を破棄したら許さないから」
「おお、僕の元婚約者は怖いなぁ。健闘を祈っているよ。〝落ちこぼれ〟のおふたりさん」

 エリオットは私の耳元でそう言うと、ロレッタのもとへと戻っていった。

 結局、そのまま夜会はお開きとなり、夜会を潰すという目的は達成できたものの――私たちは、新たな大きな問題と向き合うことになった。

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