転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
 エリオットは、悔しそうに唇を噛んだ。私たちを捕まえるのには、あと一歩及ばなかったみたいだ。

「今ここで俺たちを危険人物として捕まえるなら勝手にしろ。――やれるものならな」

 フィデルの一言で、事態はまたもや急展開を迎える。……さあエリオット。これからどう動く?

「本当の話なら、今ふたりがいないと困るのは私たちじゃないの?」
「そうだ。ふたりを拘束なんてされたら……」

 一気に不安に駆られた周囲の人々は、既に私とフィデルを捕らえることに賛同できなくなっているようだ。

「……わかった。今回は、お前たちを見逃すことにする。ついでに、フィデルが見たという事件が解決するまでは、自由に動き回ることも許そう」

 エリオットが言うと、兵士が私たちのもとから去っていく。私は胸を撫でおろした。

「せいぜい、自分が見てしまった不幸に抗って、今度こそちゃんと人を救えるといいな。……束の間の自由を楽しめよ。フィデル」

 エリオットはフィデルに近寄ると、小さな声で、外に出てきたフィデルを嘲笑うように言う。
フィデルのすぐ隣にいた私には、エリオットのその言葉を聞き逃さなかった。
 束の間の自由? 事件解決のためだけにフィデルを使い、用がなくなればまた幽閉するつもり? なんの意味があって、フィデルがそんなことされなくてはいけないの。

「フィデルから離れて」
 
 私はふたりの間に割って入り、フィデルの前に立ちはだかると、エリオットを睨みつけた。
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