転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
「……今日は多めに能力を使ったからか、少し疲れちゃった。先に寝てもいい? ソファで寝るの邪魔だったら床で寝るから」

 夕食をとりシャワーを浴びると、急に眠気が押し寄せた。昨日、あまり眠れなかったせいもありそうだ。
 フィデルはまだ本を読んでいたので、ソファで寝たら邪魔になる。でも、眠気に勝てそうにない。
 あくびをしながら、フィデルの返事を待たず床に転がろうとすると、フィデルに腕を引っ張られる。

「……フィデル?」
「今日からお前はこっちで寝ろ。俺がソファで寝る」
「へっ?」

 ぐいぐいと強い力で腕を引っ張られ、ベッドルームへ誘導される。
 いつもフィデルが寝ていた場所に、私は問答無用で放りこまれた。

「ま、待って! 私が勝手にここに泊まってるんだから、フィデルがベッドで寝るべきよ!」
「気にするな。別に俺はどこでも寝られる。……逆に、今まで悪かった」
「……なにが?」

 私が聞くと、フィデルは頬を若干赤らめ、そっぽを向いてこう言った。
「……お前をソファで寝かせていたことだ。お前がシャワーを浴びているとき、ニールに怒られた。〝女性をソファで寝かせるなんていけない〟と」
 ニールっ……! あなたはどこまで紳士なの。でも、素直にいうことを聞くフィデルにも驚きだ。『関係ない』とか言ってつっぱねそうなのに。
「俺は、あまり異性と関わりもないまま過ごしてきたから、よく知らなかったんだ。……その、嫌なことがあれば、お前も言ってほしい。できる努力は、していこうと思う」

 恥ずかしそうに言うフィデルを見て、なぜか私まで恥ずかしくなってきた。
 私、フィデルに女の子扱いされてる……?
 そう思うと、どうしてかすごく照れくさくて……同時に嬉しくもあった。

「うん。ありがとうフィデル。でも、寝づらかったらいつでも言って? すぐに場所交代するから」
「俺のことはいい。じゃあな。……おやすみ」
「! うん。おやすみなさい」

 パタン、とベッドルームの扉が閉まる。
 
 ――初めて、フィデルが『おやすみ』って言ってくれた。

 一緒に協力していくうちに、フィデルとの仲も順調に深まってきているように感じる。
 私はふかふかのベッドにダイブした。布団から、ほのかにフィデルの香りがする。
 まるで、フィデルと一緒に寝ているようなくすぐったさを感じながら、私は目を閉じた。

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