転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
調査という名のデート
 目を覚まし、ベッドルームから出ると、ソファで眠るフィデルの姿があった。
 普段、私よりずっと見た目も性格も大人びているフィデルだけど、その寝顔は近くで見るといつもより幼い。本を読んでいる途中で寝てしまったのか、顔の横に開かれたままの本が置いてあった。

 そのうち、いつものようにニールがやって来て、現状報告も交えた雑談をしながら朝食をとる。

「今日は朝から、エリオット様とロレッタ嬢のテンションが異様に高かったですよ。なにかあったんでしょうか」
「身近で事件が起きるかもしれないってのに、危機感ないのかしら。でも、どうしてかはちょっと気になるわね」
「お前の目を使って、ふたりを見て見ればいいんじゃないか」

 フィデルに言われ、能力を発動させようとした――が、する前にやめた。

「どうした。使わないのか?」
「……あのふたりに使う時間がもったいない気がしてきたわ。一度使うとどんどん見られる時間は減っちゃうし」

 エリオットとロレッタがテンション高い理由を探るためだけに、貴重な一回を使うことにためらいが生まれた。すっごくくだらない理由の可能性だって大いにありえる。そんなギャンブルに今は乗っていられない。

「あ、でしたら、ドリス様に聞いてみるのはいかがです? ドリス様なら城内での出来事はなんでも知ってそうですし」
「そうね。ナイスアイディアだわニール! 今日はまず、ドリスさんのところに行こう。フィデル、それでいい?」
「好きにしろ。……おい、そこのジャムをとってくれ」

 フィデルに頼まれ、私は自分の近くに並べて置かれている三種類あるジャムの中から、迷わずマーマレードを選びフィデルに渡した。フィデルもなにも言わず受け取り、パンにジャムを塗り始める。
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