転生令嬢はまるっとすべてお見通し!~婚約破棄されたら、チートが開花したようです~
 ずっと思っていた。母を失ったあの日から。
 どうして俺だけ、異能者に生まれてしまったんだ。どうしたら俺は、普通の人間になれるのか。
 まだ小さくて弱かった俺は、そう思いながら夜な夜な泣いていた。

 しかし、いざ力を失ってみると、心の中にぽっかりと穴が開いたような感覚だ。
 寂しい、とも違う。言葉にするなら、虚しい、に近い。

 ――どうして、このタイミングで失ったんだ。

 今の俺は、そう思わずにはいられなかった。

 やっと、俺自身がまた能力を使おうと思えたときに。俺の力と共に、頑張るという人間が現れたときに。何故、今なんだ。
 事件解決もできず、結局シエラの〝千里眼〟に頼ることしかできなかった。俺は彼女の足りない部分を補うこともなく、無力になった。

「……フッ……いつもそうだ。俺は」

 薄暗く、じめじめとしたこの空間にお似合いの、自嘲気味の笑いが零れる。

 なんの役にも立たず、自分の見たもののせいで、誰かを不幸にするだけの、どうしようもない人間。
エリオットの言う通り、俺は、太陽の下で生きることを望んでいいような人間じゃなかったんだ。

 俺は誰も救えない。――自分さえも。
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