人格矯正メロディ
2人は無言のままジリジリと近づいてくる。


「なによ? なにか用事なの?」


必死に話しかけるが、やはり返事はなかった。


不安と恐怖で心臓が早鐘を打ち始めた時、海の右手があたしの胸倉をつかみ、すごい力で引き立たされていた。


あたしはか細い悲鳴を喉の奥から絞りだす。


海はあたしの体が軽々と片手で持ち上げると、同じ目の高さまで持って来て制止した。


あたしの足は8センチほど浮き上がり、つかまれた胸倉で窒息してしまいそうだった。


それよりなにより、海がこんなに力があるなんて知らなかった。


まるで火事場の馬鹿力だ。


あたしは必死に海の腕から逃れるために両足をバタつかせた。


しかし、抵抗すればするほど苦しみは増して行く。


「なにを……」


苦し気な声を振り絞った瞬間、海があたしから手を離していた。
< 191 / 202 >

この作品をシェア

pagetop