不器用オオカミとひみつの同居生活。
「その不良は喧嘩でやられて倒れてたってこと?」
「たぶん?理由は聞いてないからわからないんだけど」
「わからない!?聞かなかったの!?」
「うーん、わざわざ聞くようなことでもないし」
「聞くでしょふつーは、気になって」
すうちゃんはそう言うけど、私は本当に気にならなかった。
というか手当てしてるときもそんなことは一切頭の中になかった。
「待って、もしかして名前すら」
「そういえば聞いてなかった。聞いたほうがよかったかな」
「当たり前じゃん。鶴の恩返しの鶴でさえ『私は鶴です』って名乗ってるよ」
「それはちょっと意味わかんないけど、つまり聞いたほうがよかったんだね」
「そもそもなんで家に連れていったのさ」
「……わかんない」
これまでで一番あきれたような顔をされた。
自分でもなんであんなことを言ったのかわからなかった。
鶴の恩返しならぬ不良の恩返しをねらったわけでもないし、恩を売ったわけでもない。
特に理由なんてなかった。