恋人のフリはもう嫌です
どう取り繕おうかと思案していると、カウンターに座る彼の隣に女性が腰掛けた。
「西山さん。どうしてこちらに? もっとお話ししましょうよ」
あらあら。これは熱烈な。
邪魔をしては悪いなと、私は彼とは逆側に体を回し、店内に吉岡さんを探す。
吉岡さんは難なく見つけられて、元いた総務課の座敷にいた。
こちらの様子を窺っているようだった。
「どうして、私を置いてそっちに戻っているんですか!」
という、非難の眼差しを向けたつもりなのに、吉岡さんは親指を突き立てて「グッドラック!」とでも言いたげだ。
「いやいやいや。私はお邪魔でしょうし、吉岡さんのお側にいたいです」
そんな脳内会話が、吉岡さんに通じるわけもなく。
再び、親指を強く突きつけられ、ため息を吐いた。
私の隣では、女性からの熱いアプローチが繰り広げられている。