恋人のフリはもう嫌です

 社用車に乗り込み、私たちが見えなくなるまで松本社長は見送ってくださった。

 追い追いの部分は、今回購入した機器から随時、キタガワのホームページ経由でインターネット販売しないかというものだった。

 メインは製品単体を販売したいという部分を、入念に説明していた。

 戸田設備に自社製品のような顔で扱われているのは、社員がよく思っていない理由でもあると教えてくれた。

 うちは零細企業だから仕方ないと、松本社長は諦めているようだった。

「今後に繋げられたでしょうか」

「どうだろうね。少なくとも、興味は持っていただけたようだ」

「我が社の勤怠システム導入の話だけだと思っていたので、驚きました」

「最初は、ね。戸田設備に打ち合わせに行った辺りから、健太郎の思惑に気がついて」

 西山さんも戸田設備の時点では、知らなかったのだ。
 その事実に息を飲む。

「会社の意向として、決定事項なのかと」

「今はそうだね。俺が提案したから。今後、松本機器のような埋もれている良品を、我が社経由で売りたいって」

「素敵ですね」

 素直に感想を述べると、西山さんの顔が和らいだ。
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