恋人のフリはもう嫌です
「千穂ちゃんといると結婚もいいかもなあと思えるから、不思議だよ。それに子どもも。千穂ちゃんとの子どもなら、悪くないかもしれない」
彼の本音を聞けて、胸が悲鳴を上げる。
もちろん、それは喜びの悲鳴。
「悪いわけないです。いいに決まっていますよ」
彼は少し考えてから言った。
「千穂ちゃんによく似た、かわいい女の子で頼むよ」
私が吹き出してクスクス笑うと、彼に再びキスをされ、その唇は確かめるように深くなる。
「透哉さん」
唇の隙間から彼の名前を呼ぶと、彼は甘く囁いた。
「千穂。愛してる」
この囁きがこういう時のマナーだなんて、もう思わない。
彼の心からの言葉だと知って、心が震えた。