恋人のフリはもう嫌です
恋人役を頼まれて、三ヶ月が経つ。
職場では仲睦まじい恋人のフリをして、たまに一緒に帰り、食事をする。
そして送り届けられる。ただそれだけ。
今日みたいに金曜に食事に行っても、なにひとつ変わらない健全な関係が続いていた。
本当に、彼の面倒な女避けに任命されただけなのだと痛感する。
そのお礼が現物支給の食事だとしたら、奢っていただくのは正当な対価かもしれない。
一人暮らしのマンションの前まで送ってもらい、お礼を口にするまでが一連の流れ。
就職と同時に、なんとか過保護な父から勝ち取った一人暮らし。
健太郎さんと同じ会社に就職するからという取り引き材料がなければ、一人暮らしもままならなくて、なんと健太郎さんと同じマンションに住んでいる。
これも父の意向だ。
もちろん階は違えど、そこまで父の信頼を得ている健太郎さんに若干引き気味になりつつ、この件についても健太郎さんに甘える形で一人暮らしを始められた。