恋人のフリはもう嫌です

 西山さんが名指しされ、彼が会議の進行役に変わる。

「メーカーと打ち合わせするにあたり、実際に勤怠を管理する総務の方にも意見をいただきたく」

 だから健太郎さんが接待を受けていたのか、と理解していると、どうも思っているのとは違う話になった。

「まだ新人ではありますが、藤井さんに同行を願いたい」

 わ、私?

「なにより総務の窓口をひとつにしていただけると、情報システム課としても助かります」

 総務の代表だなんて、どう考えても大役だ。

 心の中で焦っていると、朝はあんなにも嫌そうだった健太郎さんも私を推すような発言をする。

「新システムですので、若い力が必要です。藤井さんは適任だと思います」

 西山さんと健太郎さんの推薦を受け、情報システム課の課長と、総務課の課長がなにやら話し合っている。

 そして総務課の課長が、私に向かって言った。

「藤井さん。やってくれますか」

 ここで嫌だと言えるわけがない。

「はい。精一杯務めさせていただきます」
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