恋人のフリはもう嫌です

 会議が終わるとお昼休憩の時間で、私はすぐに吉岡さんに泣きついた。

「吉岡さ〜ん。どうして私なんですか〜」

 眉を八の字にさせた情けない顔の私を見て、吉岡さんはブブッと吹き出した。

「吉岡さん! 私にとっては深刻な話なんです!」

「ごめんごめん」

 涙まで流した吉岡さんが目元を拭いながら、説明してくれた。

「社内のシステムを導入するのは、今までにも何度か機会があって。総務だと、ほら、藤井ちゃんがよく止める経理のシステム」

 社員の出張費の計算などをするシステムで、とてもよくできた便利なシステムではあるけれど、いかんせん機械との相性が悪い。

 吉岡さんも『藤井ちゃんがよく止める』って枕詞をつけなくたって。

 不満に思いつつも、吉岡さんの話をおとなしく聞く。

「あのシステムも、もちろん西山さんが作ったんだけどね。彼が説明とか、下々と関わるとさ」

「下々って、彼はお殿様かなにかですか」

「まあ、そんなものじゃない。彼」

 そんなわけないじゃないですか。と、言えない。
 そうですね〜と納得してしまう。
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