恋人のフリはもう嫌です
「みんな、彼と話す機会がほしくて。たいして困っていないのに、連絡しちゃうわけよ。ヘルプデスクに」
歓迎会の光景から、その光景が結びついてため息を吐く。
「大変そうですね」
「だから最初の頃に対応して、懲りたんでしょうね。彼は、システムを作る仕事の専任になって。説明や操作不具合は、別の人が担当するようになったってわけ」
その判断は正しい気がする。
仕事に不必要なアプローチに時間を割いていたら、彼の場合、仕事どころじゃなくなりそうだ。
モテる人は大変だな。
他人事のように思ってから、重大な事実に気付く。
「って、最近の私は、彼を下界に呼び出しています!」
やっと気付いた私に、吉岡さんは笑う。
「そう。だから愛の力は偉大だなって」
終着点がそこになって、私は全くもって肯けない。
「え、ちょっと待ってください。彼は天空人で、お殿様で? 下界に降りて下々の者たちとは関わらない人、なんですよね?」
今まで聞いてきた彼の存在を要約すると、そうなるはずだ。