恋人のフリはもう嫌です

 わざわざ遊んでいた部分を見せなくても。

 わざとではないとは思うけれど、もやもやする。
 それともそういう男なのだと、私に釘を刺しておきたいのかな、と深読みをしてしまう。

 遊んでいたというよりも、現在進行形で遊んでいるのかもしれないのだし。

 思考が泥沼にはまりそうだ。
 こんな話題で不機嫌になっていると悟られたくなくて、わざと明るく言う。

「西山さんが煙草を咥えていたら、女性はイチコロでしょうね。若い子がわざとストローを咥えて写真撮ったりするのと、同じ原理で」

 かわいく見せるために、ストローを軽く咥えている写真。
 あれに西山さんを当てはめると、死者が出そうなくらい色気がすごそうだ。

 私の意見に、西山さんは笑う。

「若い子って、千穂ちゃんも若いでしょう。まあ、あんな写真、千穂ちゃんに撮ってほしくはない。というより、SNSに写真載せたりしないでほしいな」

「ああいうの、苦手で」

「そう。安心した。なんか健太郎の気持ちがわかるよ」

「健太郎さん?」

「いや、こっちの話」
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