恋人のフリはもう嫌です
会が進むにつれ、次第に近くにいた女性の人数が減っていく。
「みんなお手洗いに立ったついでに、隣の座敷に行っているみたいね。私たちも行こうか」
吉岡さんもお酒が入って、陽気に誘ってくる。
「いえ。私は」
頑な姿勢を見せる私に、吉岡さんは吹き出して宥めるように言った。
「まあまあ。さすがに人がすごくて、近くには行けないよ。カウンターに行って、女性に囲まれている西山さんを見に行こう。きっと、すごいから」
まあ、その程度なら。
噂通りの人なのか、興味もあるし。
吉岡さんに促され、カウンターに座る。
どちらの座敷も戸は開けられていて、自由に行き来されている感じだ。
カウンターからも、よく見える。
物の見事に女性に囲まれている西山さんを視界に捉え、吉岡さんと感嘆の声を漏らす。
「本当にすごいわね。彼」
「そうですね。想像以上です」