恋人のフリはもう嫌です
「千穂ちゃんは、俺が想定した通りにシステムを使ってくれないからね。だから止まってしまうのだけれど」
突然のダメ出しに、小さくなって「すみません」と謝る。
「いや。俺の想定が正しいとは限らない。俺は総務の仕事を、全て把握しているわけではないから。千穂ちゃんは先入観なく、的確に必要な要望を伝えられる」
真面目な理由を聞き、目をしばたかせる。
「私よりも総務の業務を理解している方はたくさんいらっしゃるので、適任は他の方のほうが」
「いや、大抵の人は「あの西山さんが作ったシステムだから正しいはず」と、使えるように使ってくれるんだよね。ありがたいというべきか」
「なんだか私が、ものすごく捻くれ者みたいです」
「逆でしょ。ものすごく真っ直ぐなんだよ」
相変わらず、とろんとした色気爆破な顔で話しているのに、彼は熱く語る。
「誰にでも臆さず、自分の意見を言えるのも才能だよ」
あまりの賞賛が、くすぐったくて仕方がない。
「でも、用もないのに、西山さんと話したくてヘルプデスクに連絡する人がって」
よほど嫌な目に遭ったのか、西山さんは眉を潜めた。