恋人のフリはもう嫌です

「ああいう人は、的外れな内容で連絡してくるから論外。千穂ちゃんは悩み抜いた末に、システムが停止すると初めて相談する。もっと早く頼ってくれてもいいくらいだ」

「それは」

 自分で解決できるのなら、西山さんの手はもちろん、吉岡さんの手だって煩わせたくない。

 私の困り顔を察知したのか、彼は自分の発言を訂正した。

「いや。今のは私情を挟んだかな。少しでも千穂ちゃんと話したいから」

 そう言って再び目を閉じてしまう彼に、慌てて訴える。

「あの、眠ってしまわれたら、どうしていいか」

「ん。眠い」

「西山さん」

「ん」

「透哉、さん?」

「ん、千穂ちゃん。好きだよ」

「え」

 胸がギューッと掴まれたように痛くなり、顔が熱くなっていくのがわかる。
 爆弾を落とした当の本人は、気持ち良さそうに寝息を立て始めた。

「からかった、んだよね?」

 動揺丸出しの震えている声に返答はもらえず、彼と同じようにテーブルに腕と頭を預けた。
 しばらく彼を見つめ続け、彼の寝息に誘われるように私も眠ってしまった。
< 96 / 228 >

この作品をシェア

pagetop