泡沫の記憶

「朱夏、髪伸びたね」



耳に掛けた髪

目に掛かる前髪



その隙間から見えるキラキラした瞳



「うん
こっち来てから切ってないからね
私も伸ばそうかな…」



私も…

も…



美空を意識してる?



オレが今好きなのは

オレが今愛してるのは



そぉ…美空なんだよ



「京ちゃん、ここわかんない」



「えー…っと…

ここは…」



顔を上げたら朱夏と目が合った


近い



「朱夏…
ここは…」



朱夏はオレから目を離さなかった



近くて

触れそうなくらい



どちらかが動いたら

触れてしまう



「京ちゃ…」



「朱夏…
ここはさ…」



プリントの問題をシャーペンの先で
指しながらオレは言ったけど…



一度交差して
どんどん離れていったはずの線は…

また近付いていた



「京ちゃん…

好きなの?

…ミクさんのこと…」



ドキン…



「…うん…好きだよ…」



「そっか…
あ、京ちゃん、お湯沸いてるよ」



「うん…」




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