転生人魚姫はごはんが食べたい!
 貴女の話が一番怖かったわね! とは言わずに私もニナを抱きしめた。悲し気な姉の表情を前に少しだけ心が揺らいだのも事実。でもこうして迎えてくれる人がいることは、ここに帰ってきて良かったと思わせてくれる。

 私の帰る場所は、ここでいいのよね。

 そんな色々あった夜が過ぎてもエリクの授業は待ってくれません。私たちのために力を尽くしてくれた旦那様も仕事に励んでいるのです。私でって、眠いなんて我儘を言えるはずがありません。眠たい目を擦り、今日も厳しい先生に教えを乞うのです!

「それで、どうだった?」

 授業が始まるなり、深刻な表情に緊張を浮かべた先生から問い詰められる。良い先生に恵まれたおかげと、勉強熱心な生徒の努力のかいもあって、私だってそれなりに長文が読めるように成長しているのよ!

「エリクの書いた物語、とても面白かったわ!」

「お世辞だったら怒るから」

 今にも怒り出しそう空気を滲ませて言わないでほしい。感想を言う方だって緊張してしまう。けど面白かったのは本当なので、臆することなく感想を伝えられた。

「主人公と王子様の逃避行、身分違いの恋のお話だったわね。どきどきしながら読み進めたけれど、悲しい結末で終わってしまって、最後には泣いてしまったのよ」

「そんなにちゃんと読んでくれたんだ……」

「読み始めたら徹夜で読んでしまったわ。本当にとっても面白かったんだから! 私、昔から恋愛小説が好きだったの。だからまた読むことが出来て嬉しくて」

「君のいた国にもこういう物語があるの?」

「漫画に小説、アニメにドラマ、あの頃はなんでも嗜んだわ」

「何それ……まあ、なんでもいいけど。僕の小説、それと比べてどう?」

 エリクはさらに問い詰めてくるけれど、比べられるものでもない。物語にはそれぞれの良さがあるからだ。

「比べられるものじゃないと思うけれど、でも……」

「でも!?」

「えっと、これは私個人の、とっても贅沢なお願いよ?」

「いいから言って」

「エリクが書いた幸せな結末が読んでみたいなって」
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