転生人魚姫はごはんが食べたい!
「そんなわけないじゃん!」

「どうしてそう言い切れるのよ!?」

 お嫁に来てからそれなりに時間が経ったじゃない? もしかしたら旦那様は人魚との恋愛に夢をみていたのかもしれないでしょう? それなのに蓋を開けたら私みたいな食い気の多い人魚が来ちゃったわけで、どうにか返品しないではいてくれるけれど飽きられてしまったとか……

 私にだって食い気ばかりの自覚はある。それに思い当たる節はもう一つ。今日まで旦那様は真っ直ぐすぎるほどの好意をくれたけれど、私は歌さえ満足に返すことが出来ていない。

 もう飽きられてしまったのかもしれないわね。

「考えれば考えるほど倦怠期疑惑よ!?」

「まったく、ジェス君がどれだけ君のことが好きか、わかってないのは君だけなんだね……て何言わせるの!」

「今のはエリクが勝手に」

「聞いたの君でしょ!」

「そうだけど……」

「だから倦怠期とか馬鹿なこと言ってないで、僕に幸せな結末ってやつ、見せてよね。ちゃんとジェス君のこと幸せにしてあげてよ? お嫁さん」

「旦那様って、愛されてますね」

「何それ」

 エリクは軽く笑い飛ばすけど、私は二人の仲の良さに嫉妬してしまう。

 ……嫉妬?

 旦那様を想って嫉妬するような感情が芽生えていたことに驚いた。出会ったばかりの頃は考えもしなかった感情だ。でも今は、旦那様のことをなんでも知っているエリクのことを羨ましいと思っている。

「エリクが羨ましい。私はこんなにも旦那様との距離を遠く感じているのに、エリクは旦那様のことをなんでも知っているのね。狡いわ」

「僕とジェス君は腐れ縁なんだからさ。なんでも知ってて当たり前だよ」

「そうなの?

 私、そんなことさえ知らずにいたのに……

「学生時代に知り合って、そのまま側近にって引き抜かれたの。僕ってばこれでもいいところの息子だったんだよ。それなのにジェス君てば勝手に許可取って、卒業と同時に僕は連行されたってわけ。ジェス君て意外と強引だから気をつけなよ?」

 ほら、また見せつけられている。私が知っていることはせいぜい旦那様が強引だってことくらいなのに……

「ちょっと! せっかく僕が慰めてやってるのに落ち込まないでくれる!?」

「え!?」

 エリク、慰めていてくれたの?

「君、今失礼なこと考えてるでしょ」
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