転生人魚姫はごはんが食べたい!
 こんなにも会いたくて、あの人のことばかりを考えている。私は自分でも気付かないうちに旦那様のことが大切だと感じていた。離れたくない。ずっと一緒にいたいと願っている。自分の知らない姿を知る友人にさえ嫉妬して、避けられれば悲しいと感じるほどに――

 好きなのよ。

「だから一緒にいられて毎日が楽しい。それは人間の私でなければ叶わないことだし、旦那様を刺してしまったら叶わないでしょう?」

 けどマリーナ姉さんはなおも私を可哀想だと言い続けた。そして短剣をその場に放置して海の国へと戻ってしまう。

「ええっ!? マリーナ姉さんてば、私には必要ないんだから持って帰ってよね!?」

 これ、ここに放置してはいけないわよね……かといって持って帰っても危ない気がするし……物騒な物と一緒の置き去りにしないでー!

 とはいえいくら叫んでもマリーナ姉さんは去った後、今から追いかけたところで受け取ってくれる保証はないし、この広い海で見つけ出せる自信もない。かといって危険な物を持ち歩く勇気のない私は布でくるん木の根元に埋めてしまった。
 これは旦那様とともに生きることを決めた私なりの覚悟でもある。マリーナ姉さんに会った時はもう一度、あの短剣は私には必要なかったと言おう。これから何度伝えることになったとしても、私があれを掘り起こす日は来ない。


「あれ、出掛けたわりには早いんだ」

 城に帰ると私を迎えてくれたのはエリクだった。忙しい日はほとんで顔を合わせないこともあるから、今日はエリクと縁のある日だと思う。私は正直に早く帰った理由を告げた。

「旦那様のことが気になって早く戻って来たわ」

「それ、僕じゃなくてジェス君に言ってあげてよね。もうすぐ帰ってくると思うからさ」

「本当!?」

 早く旦那様に会いたい。そう感じていることを一人で自覚してから、今度はエリクに冷やかされた。冷やかしは遠慮したいところだけれど、エリクだって心配してくれていた一人だ。まずは仲直りしてよねという応援に、旦那様が立ち寄るという部屋で一緒に待たせてもらうことにする。
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