転生人魚姫はごはんが食べたい!
 私が悩んでいるうちに部屋の捜索を終えた兵士が戻った。

「ラージェス様! なにやら怪しげな本を見つけました」

 そんなものあったかしら?

「見て下さいこの内容を! 一見してただの日記のように見えますが、所々に暗号が混じっています! きっと暗殺の計画書に違いありません」

 違う違う! それ私の日記! 文字が覚えきれなくて日本語混じりで書いていただけなのよ!

 取り返そうともがいた身体は抵抗として押さえつけられた。

「証拠はこれでいいでしょう? さあお連れして」

 完全に今でっち上げましたよね!? ちょっと待って! 人の日記を暗殺未遂の証拠にしないで! まったく関係のないことしか書いていないのよ! ほとんどごはんのことしか書いていないの!

「言い逃れも出来ないようですし、大人しく罪を認めているようね」

 思いっきりしているわ! 心の中でだけれど……だから声が出せないのよ! 誰かさんの用意してくれた紅茶のせいでね!?

 いくら心の中で叫んでも届くことはない。取り乱す私に向けて、女性は勝ち誇ったように笑みを浮かべる。私が短剣を所持していなかったことは計算違いだったみたいだけれど、つまり貴女が黒幕ということでいいのかしら? 敵という認識でいいのかしらね!?
 旦那様は私が連行されることになっても言葉すら発しない。でも女性の方は、しっかりと私の表情を眺めていた。

「ごめんなさいね。お嬢さん」

 聞き覚えのある呼び名に思い出すのはあの占い師の姿だった。確かに思い返せば声は似ているし、背格格好も一致する。
 でもあの占い師がどうして私を貶めようとするのか、肝心なことは何一つわからないまま、部屋から連れ出されてしまうことになりそうだ。
 とっさに振り返った私が目にしたものは言い争う旦那様とエリクの姿。といってもエリクが一方的に旦那様に詰め寄っているだけで、旦那様は聞いているのかいないのかといった様子だけれど。
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