転生人魚姫はごはんが食べたい!
口に含むとまず濃厚なチーズを感じる。柔らかな食感は卵と牛乳から作られたものだろうう。さらには表面を覆うチーズ。ベーコンにはそれ自体にもしっかりと味がついていて、塩気が心地良いほどだった。この三角形の中に美味しさが凝縮されている。
「キッシュだ」
「キッシュ……」
それは前世でも食べたことのある馴染みの料理。カフェなどでは人気のメニューにもなっているし、専門のお店だって何度か目にしたことがある。けれどこれは、そんな生易しい感動とは違う。
私はもう一度、料理に手を伸ばした。一口、二口、何度食べても私の結論は変わらない。
美味しい……
食べる度に味わい深くなる。おそらく冷めても美味しいけれど、電子レンジのないこの時代。焼きたてを食べられたことに感謝したい。
そこで私は付け合わせの野菜にも手を伸ばす。しゃきしゃきとした歯ごたえに、広がる青臭さは新鮮そのものだ。ドレッシングをつけないからこそ、素材の持つ美味しさだけを味わえる。
なんて懐かしい……
「エスティ!?」
私の目からは自然と涙が流れていた。その涙に私よりも狼狽えたのは旦那様だ。
「お前、どっか調子が悪かったのか!? それとも不味かったか!?」
「不味いだなんて!」
私はそっと指で涙を拭った。
「無理して食べることないぞ!?」
「いいえ。きちんと最後までいただきますわ。せっかく料理人の方が心を込めて作ってくれたのですから」
「本当に無理すんなよ? 残すことが心苦しいなら、俺がお前の分も食べてやるからな?」
任せろと旦那様が手を差し伸べるので私はとっさに自分の皿を囲い込んだ。
「申し訳ありません旦那様」
その瞬間の私の冷え冷えとした声といったら、我ながら大人げなかった。
「本来妻である私は夫に皿を託すべきなのかもしれませんが、こればかりは旦那様にも譲れませんわ。そして旦那様はきっとこう思っていらっしゃるはず。この女食い意地はりやがって! と。たとえ思われたって私には痛くも痒くもありませんわ!」
私が一息に告げると旦那様が言葉を失った。やがて我に返ったその口から零れたのは盛大な笑い声だ。
「おまっ、それっ……!」
「何が可笑しいのですか?」
理由はわからないけれど、二人しかいな部屋だ。私が笑われていることくらいはわかる。
「キッシュだ」
「キッシュ……」
それは前世でも食べたことのある馴染みの料理。カフェなどでは人気のメニューにもなっているし、専門のお店だって何度か目にしたことがある。けれどこれは、そんな生易しい感動とは違う。
私はもう一度、料理に手を伸ばした。一口、二口、何度食べても私の結論は変わらない。
美味しい……
食べる度に味わい深くなる。おそらく冷めても美味しいけれど、電子レンジのないこの時代。焼きたてを食べられたことに感謝したい。
そこで私は付け合わせの野菜にも手を伸ばす。しゃきしゃきとした歯ごたえに、広がる青臭さは新鮮そのものだ。ドレッシングをつけないからこそ、素材の持つ美味しさだけを味わえる。
なんて懐かしい……
「エスティ!?」
私の目からは自然と涙が流れていた。その涙に私よりも狼狽えたのは旦那様だ。
「お前、どっか調子が悪かったのか!? それとも不味かったか!?」
「不味いだなんて!」
私はそっと指で涙を拭った。
「無理して食べることないぞ!?」
「いいえ。きちんと最後までいただきますわ。せっかく料理人の方が心を込めて作ってくれたのですから」
「本当に無理すんなよ? 残すことが心苦しいなら、俺がお前の分も食べてやるからな?」
任せろと旦那様が手を差し伸べるので私はとっさに自分の皿を囲い込んだ。
「申し訳ありません旦那様」
その瞬間の私の冷え冷えとした声といったら、我ながら大人げなかった。
「本来妻である私は夫に皿を託すべきなのかもしれませんが、こればかりは旦那様にも譲れませんわ。そして旦那様はきっとこう思っていらっしゃるはず。この女食い意地はりやがって! と。たとえ思われたって私には痛くも痒くもありませんわ!」
私が一息に告げると旦那様が言葉を失った。やがて我に返ったその口から零れたのは盛大な笑い声だ。
「おまっ、それっ……!」
「何が可笑しいのですか?」
理由はわからないけれど、二人しかいな部屋だ。私が笑われていることくらいはわかる。