転生人魚姫はごはんが食べたい!
駄目ね。私がそんなことでどうするの! つられて落ち込むなんて、旦那様の方が辛いはずなのよ。旦那様の分まで私が笑っていないとね。
幸いなことに夕食は旦那様と一緒に食べることが出来た。食事を終える頃にはいつもの旦那様の調子に戻っていたので私もそれ以上は深く踏み込むことは止めておく。でもいつか、旦那様が求めてくれたのなら。その時はもう一度話を聞いてあげたいと思う。
食事を終えてから廊下を歩いていると、偶然エリク様と顔を合わせることになった。親しいとは呼べない間柄だけど、無言で通り過ぎるのも感じが悪いと思う。私としては仲良くなれたら嬉しいわけで、勇気を出して挨拶してみた。
「こんばんは」
無視されることも想定していたけれど、エリク様は軽く頭を下げることで応えてくれる。ただし私を射貫く眼差しは相変わらず険しい。というか不機嫌さが伝わってくるものだ。
「君はいいよね。毎日楽しそうで。美味しそうにごはん食べてるって聞いたし」
「確かに、本日の夕食にありましたローストビーフも大変美味しいものでしたわ。薄くスライスされて並んだ赤身は美しく、とても噛みやすくて!」
「誰も聞いてないからっ!」
「あら? では誰から聞いたのですか?」
「ジェス君! 聞いてもいないのにぺらぺら君のことしゃべってくるの!」
それは……私は無実とはいえなんだか申し訳ないわね。
「すみません、本当に……」
「ホントだよ! そんなに毎日食べてばっかりいて太っても知らないんだからね!」
「――っ!!」
私は衝撃に言葉を失う。まるで殴られたような、それはそれは衝撃的な一言だった。
エリク様は私の沈黙を苛立ちや反論と解釈したようだ。
「何、なんか文句でもあるわけ? 言っとくけど、僕謝らないからね」
「感謝しますわエリク様!」
「え、何……何が?」
「エリク様、貴方は大切なことに気付かせてくれました。旦那様は私を甘やかしてばかり。あの人は、美味しいだろ? これも食べろよと、私に与えてばかりなのです! そんなことでは私は駄目になってしまいますわ!」
旦那様は甘やかしたいだのと言っていたけれど、断固拒否します!
「エリク様が咎めてくれなかったら私、あやまちに気付けなかったと思うのです!」
「え、何この人、ちっとも嫌味が通じないんですけど……」
幸いなことに夕食は旦那様と一緒に食べることが出来た。食事を終える頃にはいつもの旦那様の調子に戻っていたので私もそれ以上は深く踏み込むことは止めておく。でもいつか、旦那様が求めてくれたのなら。その時はもう一度話を聞いてあげたいと思う。
食事を終えてから廊下を歩いていると、偶然エリク様と顔を合わせることになった。親しいとは呼べない間柄だけど、無言で通り過ぎるのも感じが悪いと思う。私としては仲良くなれたら嬉しいわけで、勇気を出して挨拶してみた。
「こんばんは」
無視されることも想定していたけれど、エリク様は軽く頭を下げることで応えてくれる。ただし私を射貫く眼差しは相変わらず険しい。というか不機嫌さが伝わってくるものだ。
「君はいいよね。毎日楽しそうで。美味しそうにごはん食べてるって聞いたし」
「確かに、本日の夕食にありましたローストビーフも大変美味しいものでしたわ。薄くスライスされて並んだ赤身は美しく、とても噛みやすくて!」
「誰も聞いてないからっ!」
「あら? では誰から聞いたのですか?」
「ジェス君! 聞いてもいないのにぺらぺら君のことしゃべってくるの!」
それは……私は無実とはいえなんだか申し訳ないわね。
「すみません、本当に……」
「ホントだよ! そんなに毎日食べてばっかりいて太っても知らないんだからね!」
「――っ!!」
私は衝撃に言葉を失う。まるで殴られたような、それはそれは衝撃的な一言だった。
エリク様は私の沈黙を苛立ちや反論と解釈したようだ。
「何、なんか文句でもあるわけ? 言っとくけど、僕謝らないからね」
「感謝しますわエリク様!」
「え、何……何が?」
「エリク様、貴方は大切なことに気付かせてくれました。旦那様は私を甘やかしてばかり。あの人は、美味しいだろ? これも食べろよと、私に与えてばかりなのです! そんなことでは私は駄目になってしまいますわ!」
旦那様は甘やかしたいだのと言っていたけれど、断固拒否します!
「エリク様が咎めてくれなかったら私、あやまちに気付けなかったと思うのです!」
「え、何この人、ちっとも嫌味が通じないんですけど……」