転生人魚姫はごはんが食べたい!
 もしかして感嘆のため息だと思われました?

「ええ、とても素晴らしいと感じていたところです」

 私は台詞に合わせて恍惚とした表情を作る。私にとって会場に用意されていたケーキのイチゴの方が魅力的だとしてもだ。

 ゆっくり食べたかったわ……
 だとしてもケーキのことしか考えていなかったなんて言えないんだから! 旦那様だって満足に手をつけられずに社交をしているのよ。私だって我慢しないといけないわ!

 私が意気込む横では伯爵が延々と絵の自慢をしている。そこからは長い長い自慢話が始まったとだけ記しておこう。つまり、詳細は私もほとんど覚えていない。旦那様が言っていたように話は長く、どうやって手に入れただの、どこが良いだの、私には縁遠い話ばかりだった。

「貴重なお話をありがとうございます。とても、興味深いお話でしたわ」

「おおっ! エスティーナ様は随分と話がわかる方のようですな」

 当たり障りのない感想のつもりだったけれど、伯爵はとても喜んでくれた。

「私、こんなにも興味深いお話を聞いたのは初めてですわ。あの人ったら、ちっとも私のことをわかって下さらないんですもの。いつも退屈なお話ばかり。ですから私、今日はとても楽しいのですわ」

「ええ、ええ、わかりますとも。私たちは少しばかり、他人には理解し難いのでしょうな」

 私の答えが気に入ったのか、伯爵は周囲に気を配ってから声を潜めた。

「ところでエスティーナ様、これから少し時間をいただけませんでしょうか。ぜひ見ていただきたいものがあるのです」

 これは……もしかして釣られてくれたのかしら!?
 長い話にも耐え、最後まで聞いたかいがありましたよ旦那様! 

 秘密の囁きに喜ぶも、ここで油断をしてはいけない。まずは安易に喜ばず、慎重に様子を伺ってみよう。

「私に?」

「はい。エスティーナ様にだけ特別に」
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