My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「こっちが訊きたい!」

 混乱したまま階段を上がり甲板への扉が開く。強い風に一瞬目を閉じてから海に視線を向ければすでに遠く海賊船らしき船が見えた。この船と同じくらい大きな帆船だ。

「あれに、セリーンが?」

 頷くラグ。

「連れ去られたんじゃなくて?」
「俺には自分から乗っていったようにしか見えなかった」
「もしかして、この船を守るために身代わりに」
「あいつがそんなタマかよ」
「ありがとうございました!」

 そのとき乗組員たちが一斉に声を掛けてきてぱっと掴まれていた腕が解放された。皆疲れ切った顔をしているが大した怪我は無さそうだ。

「あんたたちのお蔭で仲間も荷物も無事で済んだよ」
「しかしまさかあの新人が海賊の一味だったとはな。まんまとやられたぜ」
「え?」
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