My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
悔し気に呟いたのは昨日食堂で話したあの豪快なおじさんだった。その手には乗組員の帽子がひとつ握られていて。
(新人て、もしかして……)
彼も声を上げた私に気付いてくれたみたいだ。
「あぁ、ほれ、昨日カウンターで潰れてたあいつさ」
――やっぱり! 昨夜セリーンと甲板で会ったあの若い人だ。
他の乗組員たちも皆悔しそうに海賊船の方を見つめた。
「あいつに傭兵の手配も任せてたからなぁ」
「くそったれめ! 酔ってたのも全部振りだったってわけだ」
握っていた帽子――おそらくはその彼のものだったろうそれをぐしゃりと握り締め、おじさんは続けた。
「それにしても、あの1stの姉ちゃんは一体どうして」