My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「……あ、ありがとう」
「初めてなら、どこかに掴まってろ」
ラグがリディの腕から手を離し、そっけなく言った。
「はい……」
返事をしたリディの顔がまた真っ赤に染まっているのを見て、なんだかまた胃のあたりがもやもやした気がした。
「無事にヴォーリア大陸に着くといいな」
「そう、だね」
セリーンの言葉に答えながら、私はもう一度真っ青な大海原を見渡しいっぱいに深呼吸をした。
向かう先に、今度こそきっとエルネストさんはいる。そんな確信があった。
彼に会えたらやっと元の世界に帰れる。やっと、家族の元に帰れるのだ。
(でもその前に例の術士の海賊と対峙することになりそうだし、それに――)
ちらりとラグの方を見れば、彼もまた睨むように海の向こうを見つめていた。その髪の結び目にはブゥがゆらゆらと揺れていて。
視線を戻して私はぎゅっと強く拳を握る。
――大丈夫。私もいる。セリーンだっている。だから絶対に大丈夫。
バサバサという音に気付いて振り仰ぐと、眩しい太陽の下先ほどの新しい旗が空の色に溶け込み本当にグレイスが羽ばたいているように見えた。
(エルネストさん、待っていてください。今度こそ会いに行きます!)
遥か先、水平線の向こうで彼が優しく笑いかけてくれている気がした。
「My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ Ⅴ」【完】


