はやく俺のモノになればいいのに


「これ。なーんだ?」


先輩がポケットから取り出したのは、黒ごま。


――……私の鞄から取ってきたの?


「お揃いで猫なんてつけて。なにアピールだよ」
「みんなに幸せ自慢したかったんだよね~?」
「うっざ」
「彼女ヅラすんなって。どうせ本気で相手されてないのに」


先輩がポケットから取り出したのは、ライター。


それに、火をともすと、ゆっくり黒ごまへと近づけていく。


「だめ……!」
「あは。まだ燃やさない」


私のことを、じわじわ痛め付けようとしている。


「ヒドい。なんで。こんなこと……」
「いつまでも小バエみたいにユキくんの周りウロチョロしてるからでしょ」
「そうそう。ファン代表で動いてあげてるの」


ファン、代表……?


「ユキさんのことが本当に好きならこんなことしないで」
「はあ?」
「ユキさんは。私が傷つけられたって知ったら……悲しむ。それが自分のファンの仕業なら余計に苦しむと思う」


そういうひと、だから。

優しいから。
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