白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集

「山の中なんだけど
 目の前が海で
 すっごく景色がいい場所。

 この家では姉さんと
 まともに話せないってわかったら、
 絶対にその場所に
 姉さんを連れてくから。

 ほら、龍牙さん。
 今、俺たちに気付いた」



 その言葉を聞いて
 私は見つからないように
 縮こまってみたけど。

 十環先輩は相変わらず
 ニコニコしながら龍兄たちを覗いている。



「ほら、桃ちゃん。
 見て見て!」


 恐る恐る、窓から見下ろすと
 龍兄と小百合さんが
 バイクの方に歩き出した。



「龍牙さんの秘密の場所に行って
 海を眺めてるとね、
 絶対に人には言わないって
 思っていたことでも、
 話してみようかなって
 思っちゃうんだよね。

 俺もさ
 龍牙さんに連れてってもらうたびに
 へんな魔法にかかったみたいに
 素直になれたりしてね。

 不思議な場所なんだよね」



「じゃあ
 二人が帰って来た時には
 付き合ってるかもってことですか?」


「そうだといいね。
 じゃあ、龍牙さんと姉さんのことを
 心配するのは、
 とりあえずおしまい」

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