白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集

「桃ちゃんごめん。
 しばらくこのままでもいい?」


「……はい」



 大事なものを
 優しく包み込んでくれているような。

 そんな幸せな感覚に襲われる。



 この幸せが続くなら
 学校中の女の子たちに
 睨まれてもいいかな。


 そんな思いが、込み上げてきた。



「私が十環先輩のピンクベストを着て
 高校に行ったら……
 何かご褒美をくれますか?」



 私の言葉に反応したように
 顔をあげた十環先輩。


「桃ちゃん、ちょっと待ってて」


 そう言って私から離れ
 あるものを手にして
 また戻って来た。


 十環先輩の手にしている物……


 結愛さんがモデルとして載っている
 あのファッション雑誌だ。



 この前と同様
 まだ付箋が貼られたまま。


 この前は
『結愛さんが載っているから
 付箋が貼ってあるわけじゃない』って
 言っていたけど。


 違うと言われても
 結愛さんが載っている雑誌が
 今もまだ
 十環先輩の部屋に置いてあるだけで
 気持ちが落ち込む。


 そんな私の気持ちなんてお構いなしに
 十環先輩は
 付箋が貼ってあるページを開いた。
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