触れたい指先、触れられない心



 ピポンッ♪


「…………はぁ」


 霞さんはため息をついてスマホを手に取った。
 

 一瞬見えてしまった、”どうしても会いたい”って文字……
 意外とサヤカはしたたかで霞さんに執着しているみたい。


 このまま無視し続けていたら……いずれ霞さんの家に来て……
 

 あの女が霞さんをあきらめるまで……わたしは我慢しないといけない。
 これ以上霞さんに迷惑をかけたくないから……

 でも、胸が苦しい……



「詩音……どうして泣いているんだ……」


 霞さんの一言でハッと我に返った。
 目元に手を当ててみると、確かに涙が流れていた。

「ご、ごめんなさい……っ! ほ、ほら、もう降りないと……!」

 タイミングよく観覧車は地上に到着した。そして係員によって開かれる扉。



「……詩音! ……すまない、もう一周頼む!」
「か、かしこまりました! ごゆっくりどうぞ!」



 霞さんはわたしの腕を掴んで抱き寄せた。
 霞さんの叫び声に驚きながらも係員は再び扉を閉め、鍵をかけた。


「どして……どうしてですか……?」
「こんな泣いたまま降りるわけにはいかない。……わけを話してくれないか?」


 ずるい、そんな風にまっすぐ見つめられたら、わたしはもう誤魔化せなくなる。
 隠そうとしても止まらない涙に、もう観念するしかないと分からせられた。


「わたしは……っ、欲張りでワガママなんです……」


 こうなったらもう全部話すしかない、例え霞さんにどう思われようとも、自分勝手なわたしをさらけ出すしか……



「霞さんがもう未練はない、二度と会うことはないってわたしを気遣ってくれてるのに……それなのに、頭に過って、その度に不安になるんです……っ」
「詩音……」


 霞さんの驚いたような表情がわたしの不安を煽る。
 こんな事、本当なら言いたくなかった。ずっと心に秘めておきたかった。


 こんなわたしを霞さんに知られたくなかった……




 
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