触れたい指先、触れられない心
「こんなこと本当なら言いたくなかった……だって、霞さんに嫌われてしまうのが怖いんです……っ、だから……聞かなかったことに……!」
霞さんは隣に腰掛け、わたしを強く抱きしめた。
こんな時まで優しくしてくれるなんて……この人は一体どれほど……
「詩音」
「ごめんなさい、疑うようなことして……でも、霞さんがあの人のとこに行っちゃうんじゃないかって……! 不安で不安でどうしようもなくてっ」
「詩音、俺はアイツのとこになんか行かない。約束したではないか……詩音と添い遂げると」
「そんな約束に縛られないでください! 霞さんを束縛するつもりなんて……」
わたしとの約束を守るために霞さんは……
どれだけ霞さんはわたしのワガママを受け入れようとしてくれるの……でもそんなの霞さんの意思じゃ……
「そうではない……俺がそうしたいんだ。詩音といる時間が何よりも大切だ。もう過去に未練など、本当に微塵もない。今は詩音と一緒にいたい。……それでは駄目か? 俺は……欲張りすぎてはいないか……?」
「そんなわけ……っ、わたしも、わたしも霞さんと一緒にいたいです……っ!」
霞さんは優しく微笑んだ。
こんな優しげな表情……初めて見た……。
それに、わたしの不安を消し飛ばしてくれる、それ以上の言葉をくれた。
その言葉は偽りなんかじゃなく、全部本音で、わたしは……
そして霞さんは、わたしの方を向いて口を開いた。
「詩音。観覧車を降りたらアイツに会いに行っても良いか?」