碧花の結晶
プロローグ

発端

ここはカハワート王国。

王国誕生よりあと数年で1000年を迎えようとしていて、とても豊かで栄えている国だ。



そんな国で、王女の出産という一大事が起きようとしていた。









「王女様が産気づかれた!早く医務室へ…」

「陣痛は順調に来ている。回復魔法を掛けておけ!」


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数時間後。

そこには、2つの大きな産声が響いてやまなかった。


「…よかった。しかし双子とは珍しい。」


「王女殿下は子宝に恵まれているな…1人も死なさず2人もの子を産んだのだ。」


「しかしこの2人はよく似ているな。ああ、でも性別は違うのか。」




別室では新たな生命の誕生を祝う声で溢れていた。

女の方はルーナ、男の方はルーシェと名付けられた。

「そろそろ目を開けるのではないか?何色か楽しみだな…」



そう、誰もがまだ目を開けぬ2人の目の色 を気にしていた。

その理由は明らか。



この国では、魔法が栄えていた。

目の色は親から受け継ぐ魔法の属性を表していて、父親と同じ色の目だった場合は父親と同じ属性、母親も然りという法則が成り立っていた。


「国王陛下も女王陛下も良い魔法の才を持っている。どちらに似ようが文句はあるまい…」



そしてそこに、使用人が慌てて飛び込んできた。



「皆様!ルーナ様とルーシェ様が目を開けられました!」


「「おおお!」」


一同は感嘆の声を上げた。しかし報告に来た使用人は微妙な顔をしていた。


「どうした?何が問題でもあったのか。」


「…い、いえ…………いや、自分には測りかねます。」


「??」



ざわめき始める室内。赤子の身に何かあったのだろうか。



「あ、あの…お二人共です。ルーシェ様ルーナ様変わらず、青い…碧眼でした。」





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カハワート王国の王家にはある伝承があった。

曰く、「世界を災悪が襲うとき、王家に碧眼の子が産まれ希望を見い出す。」と。


この伝承に従って、300年周期で王家には碧眼を持つもの〝碧花«ヘキカ»〟が産まれてきた。

今までに産まれてきたと記録されている碧花は歴代で2人。そして伝承通り、1代目の碧花は火山の大噴火から国を守り、2代目は魔物の大量発生を自ら沈めた。







しかし今回は異例の事態だ。

碧花が2人、というのはどんな歴史書を見ても書かれておらず、一時期王宮は混乱に陥った。








そして3日後



国王直々に、ある発表がなされた。



「男児であるルーシェを次期国王として扱い、ルーナは秘密裏に町で育てる。」


発表を聞いていた人々は驚いた。

実は、この2人にはルキという1人の兄がいて、次期国王というのはこの兄であるルキであるとほとんど決定していた。

エトワールでは長男が家督を継ぐという文化が強く根付いていた為だ。



それに、仮にも王家の血を濃く引いているルーナを街で育てる…つまり、庶民として育てるというのだ。



しかし、国王は決定を曲げなかった。



「戸惑うものも多かろう。しかし、碧花はどうあろうと王にせねばならぬ。伝承にそうあるのだ。


それに、碧花が2人いると知られたら、他国に弱みを握られかねない。

ルーナの安全のためにも、王家の人間ということを隠蔽した方がいい。」




会議室からは不満や疑問の声が絶えなかったが、国王は強制的に会議を終了した。







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