強引な彼と恋のマジックドライビング
「誰!
言わないと結婚しない!」

柚月は前髪をぐっと掴み、ため息をつくと思いがけない人物の名前を口にした。

「大地。大地だよ!」

「えっ!お兄ちゃん……?」

「そうだ。朝陽の兄貴だ。
ちゃんと話すからここを出て家に行こう。
いつまでもこのかっこうだと俺…際限なく手ぇ出しそう…」

もそりと動いた柚月の下半身が私の太股に触れて、思わず身体を引いて真っ赤になって柚月を睨むと苦笑いしながらベットから降りて服を着始めた。

「しょうがないだろ?
ほんとはまだ抱き足りないんだから。
続きは家に帰ってから、ね」

色気を含んだ笑みを向けられぽんっ!と音がしたんじゃないかとおもうくらい私の顔は真っ赤になる。

はっきり柚月への思いを口にしてから、彼の些細な言動に私の心臓はいちいち飛び跳ねすぎだ。

誰かを好きになりその相手から愛される。
それがこんなにも温かな気持ちになれるなんてずっと私は忘れていた。

ベッドに腰掛けた柚月に手を伸ばして服を掴むと

「襲うぞコラ、早く服を着ろ」

軽く重ねられた唇はとても温かくて心地良くて

「柚月、好き」

とろとろに溶かされた私の心は、素直な言葉を簡単に口にできて、そんな私を柚月は愛しそうに目を細めて見つめながら

「朝陽、好きだよ」

もう一度重ねられた唇はとても長くてとびきり甘かった。

< 56 / 85 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop