強引な彼と恋のマジックドライビング

ぼんやりと柚月の顔を見ていた私に、

「ちょっとは俺とこと思い出してくれた？｣

伸ばされた手が昔のように私の頭を撫でた。

黙って頷く私に

「俺が料理人になったのも朝陽がコック服が似合うって言ったからだからな｣

と口を尖らせた。眉を潜めた私を見てため息をついた。

「なんだよ、覚えてないの？｣

「うん…｣

「朝陽の母ちゃんが風邪で寝込んだ時俺が夕飯作ったじゃん？｣

あぁ、確かにそんなこともあった。

父子家庭の柚月は、兄弟でローテーションで家事をしていて、高校生の男の子なのに料理上手で、遊びに来た時に母が寝込んでいるのを知るといつもご馳走になっているからと柚月が我が家の夕飯を作ってくれたのだ。

「朝陽が俺の作った飯を旨そうに食べながら　『しんちゃんすごいね。
料理人になればいいのに！しんちゃん絶対コック服にあの高さのある帽子、すっごく似合うよ！見てみたいな』って言ったんだぞ。

大地はさ、整備士になるって夢があったけど、俺はやりたいことなんてなんにもなかったからさ。

なんかすげー嬉しくて、朝陽にまた旨い飯を食わせて喜ぶ顔みたいって。

だから、高校でて調理師学校入ったんだ｣