桜田課長の秘密
「お願いします。3ヶ月……いえ、1ヶ月でいいので猶予を下さいっ!」

絶句する課長を見つめ、スウと息を吸い込んだあとに、三つ指をついて床に額を落とす。

最後の手段〝DO・GE・ZA〟だ。

いささか安直だとは思うけど、今の私に出来ることといったら、もうこれしか残っていない。

ひんやりと冷たい床の感触と、鼻をつく油の匂い。

ああ――、なんて惨めなんだろう。

思わず涙ぐんだそのときだった。

ガタン、と椅子を引く音。
続いて大きなため息が聞こえる。

「これ以上、僕を失望させないでください」

冷めきった声に恐る恐る顔を上げると、声と同じく極寒の目に見下ろされていた。

氷点下の威圧に心が折れそうになる。
それでもなんとか踏み止まって、背筋を伸ばした。

「すみません。でも、こうする以外に方法が見つからないんです」

もう一度頭を下げようとするのを、苛立ちを孕んだ声が遮った。

「残念です、もう少し賢明な方だと思っていたのですが」

「借金があるんですっ!」

「だから規則を破ってキャバクラ勤めですか、短絡的すぎます。男ですか、ブランド品ですか」

「――え?」

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